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取調室で刑事さんと向かい合う。 鉄格子の入った窓から柔らかい冬の陽が差し込んで私の背中を温める。 「えっと。まず…ここへはどうして来られましたか」 そう聞かれて普段なら「タクシーで」とボケるところだが、今はそんな場合ではない。 「携帯に母が顔面打撲で入院したからと連絡があったのでタクシーで病院に向かったの ですが、その途中こちらから電話があって病院に行く前にこちらに来てくれと言われたので 来ました」 「はい…そうですか」 白い紙に私が話した内容を走り書きしている。 「まあ、お父さんがお母さんに手を挙げてしまったということで、娘さんに来てもらった形に なるんですが、これから事情をお聞きするため二時間ほどお時間をもらいたいんですが 大丈夫ですか」 あまり大丈夫ではなかった。 家に帰ってトイレをしよう、と思っていたので、終業後職場のトイレに行かなかった。おかげで 膀胱が黄色信号である。前回は救急車で大蛇と戦い、今回は警察署で尿意と戦わないと いけないのかと空しくなった。ただ、いざとなったらトイレぐらいは行かせてくれるだろう。 国家権力にも思いやりはあるはずである。 「大丈夫です」 「分かりました」 これがうわさの事情聴取というものだなと思った。言葉を選んで話さないと後から揚げ足を 取られてガンガン責められるのだ。 「それでもぼくはやってない」 のDVDを見ておいて良かった。いつものおちゃらけで喋っていては、自らの手で有罪判決を 勝ち取るようなものである。一言一句正確に分からないことは「分かりません」必要があれば 「黙秘権」の行使。 別に私が悪いことをしたわけではないが、いつ過去の数え切れない信号無視を、ラブホテル でジュースを飲んで申告しなかったことを、40年前駄菓子屋でスーパーボールを盗んだこと を追求されるか分からない。慎重に慎重を重ねてもまだ重ね足りないのだ。 言葉には気をつけろ、目を泳がせるなと自分に言い聞かせた。 「それで。えっとその前に、お父さんの身分を証明するものが保険証しかないんで、一応 本当にあなたのお父さんかどうか顔を見て確認してもらえますか」 面通し キツイ話である。我が子でさえ、まだ警察のお世話になったことがないのに、79歳の父親の 面通しをするなどというのは、本当にいやなものだった。父は本当に警察に捕まって悪い人に なっちゃったんだなと実感した。 別の取調室に連れて行かれた。部屋が二つ並んでいて、片方の部屋のドアが開放されて いて、こっちこっちと手招きされた。狭い室内に身体の大きな刑事さんたちが3人ぐらいいた。 「この窓から中が見えますからお父さんがどうか確認してください」 壁の上の方に少し黄色みがかった小窓があった。そこから中をそっと覗くと果たして真正面に父がいた。向う側からこちらが見られないのは分かっていても、父と目が合いそうでなんだか 怖かった。窓から見える父は特にへこんだ様子もなく何か刑事さんに向かってしゃべっている ようだった。 「お父さんで間違いないですか」 「はい。父です」 「では本人確認が出来ましたので引き続きお話を伺います」 再び取調室に戻る。 「お父さんもね、相当疲れてはったんやと思うわ。一人でお母さん見てはったみたいやしね」 「はい。あの…父がお母さんをなんで叩いたのか、理由を言ってましたか」 「うん。お父さんはね『ご飯食べなかったから』って言うてはるんやけどね」 以前、叩いたときもS看護師さんが理由を聞くと「おかずに文句をつけたから」などと言った らしい。その理由も本当かどうかは疑わしいのだが、それでも今回も食事がらみで、手を 挙げたということなのだ。 せっかく手を掛けて作った物を拒否されることに父の怒りのツボがあるのだなと思った。 「ご両親の夫婦関係っていうか、仲が良かったとかそのへんどうでした?」 「はい。普通に仲の良い夫婦です。父は本当に献身的という言葉がぴったりなくらい母の 介護をしてましたから」 「ご兄弟は?あなたと」 「兄と姉です。兄は去年の暮れに倒れて今も入院中で、父は毎日面会に行ってました」 刑事さんはメモを取る手を止めて 「ああ、そう…それは大変やねえ」 とうなづいた。 あ。しゃべりすぎた、と思った。 このぐらいの事情は向こうはすべて把握してるのである。あとは私にしゃべらせて、相違点が ないか探しているのである。ああ。どこまでも私の「容疑者気分」は抜けないままだった。 続けて日頃の介護状況などを聞かれた。特に隠すようなこともないので、素直に話した。 「じゃ娘さんは去年の暮れぐらいから、お父さんの介護を助けるために週3回、実家に行って はったんやね」 「えっと…でも…2回の時もあるし…。うーん。そこは2~3回にしといてください」 まだビビっている。 あとで矛盾点をつかれて 「あのとき確かに3回て言うたやろがああああああ。」 蛍光灯を目の前に突き出されて「まぶしいよお」とべそをかく自分の姿を想像した。 背筋を伸ばしすぎたせいか肩がどんどん凝ってきた。 何だか急に虚しくなって来た。 全てがうまく行くはずだったのに、どこで何が間違ったのか。みんなが一番恐れた結果に なったのはどうしてなんだ。 元をたどれば、やはり母の検査入院を断ったときが運命の分かれ目だったのかも知れない。 ああ、しくじったな、と思った。 そして自分が今、ものすごく価値のない人間に思えてきた。
by chiroru-pu
| 2008-04-11 17:56
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